‘04年01月17日
Report #017 対決！ PROSKYER vs. SPIN POWER
1. 果たして最強のキャスティングロッドはどのロッドか？！
近年のキャスティング競技では、リョービ・プロスカイヤー派とシマノ・スピンパワー派、
そしてダイワ・サンダウナー派の三つ巴で熾烈な争いが繰りひろげられています。
しかし、どのロッドが一番飛ぶのか？という疑問については、一部にスピンパワーと
サンダウナーの比較レポートが存在する以外は
これらのロッドを同一フィールドで比較したレポートを目にすることはありません。
今回は、ST種目で多くの選手に使用されているシマノ・スピンパワーSC425XXと、
私が長年こだわり続けているBORONプロスカイヤー競技SP40－420，
S－DHZプロスカイヤー40－425で、
遠投性能やコントロール性能などのべ200投以上におよぶ投擲テストによって
徹底比較を行いました。
もちろんＳＴ種目（道糸2号＋力糸あり＋25号シンカー）でのテストですが、
果たして最強のロッドは？！
2. Specifications比較
※1：カッコ内はカタログスペック
※2：ジュラルミングリップ230gを含む
※3：アルミグリップ135gを含む
※4：グリップ内バランスウェイト20gを含む
ガイドセッティングは、
BORONプロスカイヤー競技SP40-420
S-DHZプロスカイヤー 40-425
スピンパワー SC 425XX
ともに左表のセッティングで共通とした。
なお、テスト用リールにはダイワ・Z45T改を用いた。
知見①：高比重素材；ボロンが20%含まれるBORONプロスカイヤーでは
各ロッドピースで質量が最も高い。
知見②：S-DHZプロスカイヤーに比べて、スピンパワーでは#1セクションがやや軽く、
#2，3セクションは重く厚肉に作られている。
すなわち、S-DHZは超硬調穂先＋中肉厚胴調子設計。
対してスピンパワーは中硬調穂先＋厚肉強靭胴調子設計か？
知見③：ブランク径はスピンパワーが特に細く作られているが、ロッド質量では
S-DHZプロスカイヤーと大差はない。
知見④：プロスカイヤーでは#1セクションのブランクテーパー勾配がやや大きく、
#3セクションでは勾配が小さくなる。
一方、スピンパワーでは#1セクションのブランクテーパー勾配が
プロスカイヤーより小さく、
#3セクションの勾配はプロスカイヤーより大きくなる。
知見⑤：#2セクションについては各ロッドともにほぼ同じブランクテーパー勾配と
なっている。
ロッドの設計上、遠投性能あるいは荷重負荷状態での曲がり方を
決定付ける何かがあるのか？
3. Casting-distance，accuracy比較
各ロッドで投擲した際のシンカー着地点をプロットした図を以下に示します。
知見①：BORONプロスカイヤーのフェア投擲率が特に高くなっているが、
これは返りの速いロッドに順応したリリースタイミングが体に
染み付いているためと考える。
知見②：S-DHZプロスカイヤー，スピンパワーともに、BORONプロスカイヤーに比べて
引掛けによるファールが増えるが、
軽量で振り切り易いロッド故に力みが入ったためと考える。
知見③：シンカー着地点の正確度平均はBORONプロスカイヤーで
最も小さい値（コートセンターに近い）となっており、
次いでスピンパワー，S-DHZプロスカイヤーの順となる。
これもBORONのリリースタイミングに慣れているためと考える。
知見④：最長飛距離ではスピンパワーがダントツに優れていた。
平均飛距離ではS-DHZプロスカイヤーが最も優れていたが、
向かい風の悪コンディション下でのテスト回数がやや少ないため
有利な結果になったと考える。
BORONプロスカイヤー vs. スピンパワー では
スピンパワーの方が平均，最長ともに飛距離が優れる。
知見⑤：BORONプロスカイヤーは肉体的にベストコンディションが整っていないと
性能をフルに発揮できない。
テスト当日の体力的コンディションや投擲順の影響が明確に出易い。
知見⑥：テスト回ごとの平均飛距離データでは、
比較テストした3本が概ね接戦状態であったが、
感触的には追い風コンディションではスピンパワー優位、
向かい風コンディションではBORONプロスカイヤー優位であった。
4. Cast-feeling比較
各ロッドで投擲した際のコマ送り画像（7コマ分＝約0.2秒間）を以下に示します。
スピンパワー SC 425XX
知見①：BORONプロスカイヤーでは、投擲動作の最終段階（写真中④～⑤）で
ようやく#2セクションが曲がっている。
知見②：S-DHZプロスカイヤーやスピンパワーでは、
投擲動作の比較的早い段階（写真中②～④）で#2セクションが曲がっており、
投擲動作の最終段階（写真中④～⑥）では#3セクションにも曲がりを生じている。
知見③：スピンパワーでは、ロッド反発段階の1コマあたりロッド移動量が
プロスカイヤーに比べてやや大きい。（写真中⑤～⑦）
知見④：スピンパワーとS-DHZプロスカイヤーは、
スイング速度（＝0.2秒間のロッド移動量）が
BORONプロスカイヤーに比べて若干速い。
BORONプロスカイヤーはロッド質量が200g以上重いため
スング速度が遅くなると考える。
知見⑤：体感的には、BORONプロスカイヤー，S-DHZプロスカイヤーともに
コマ送り画像の③～④で一気にパワーをかけている。
従って投擲時のパワーゾーンが狭く、タイミングを逃すとロッドの反発挙動が
先行して抜け気味になる。
一方スピンパワーでは、コマ送り画像の②～⑤で持続的にパワーをかけている。
スピンパワーは投擲時のパワーゾーンが広く、ロッドのしなり具合を感じ取り易いため
コントロール性も優れる。
知見⑥：シンカー弾道は、BORONプロスカイヤー，S-DHZプロスカイヤーともにやや低く、
スピンパワーでは高めとなる。
従って、スピンパワーは追い風コンディションでの飛距離が優れたと考える。
パワーゾーンが広いロッド（スピンパワー）ではシンカーに遠心力が十分に働くため、
弾道が高くなるものと考える。
知見⑦：体感的なロッド反発の早さは、
BORONプロスカイヤー＞S-DHZプロスカイヤー≒スピンパワーの順となるが、
(1) BORONプロスカイヤーは瞬間的に強烈な反発挙動。
(2) S-DHZプロスカイヤーは#2セクションと#3セクションの反発挙動に
タイムラグを感じる。（#2セクションが早いか？）
従って、リリースタイミングが掴み難く、抜けや引掛けによるファール頻度が
やや高い。
(3) スピンパワーは#3セクションから#2セクションにかけて反発挙動が滑らかに
伝播するように感じられる。
プロスカイヤーに比べると非常にマイルドな反発であるが、
BORONプロスカイヤーに匹敵する強烈さを持っている。
各ロッドのしなり状態を重ねたイメージ図を以下に示します。
知見①：BORONプロスカイヤー＜S-DHZプロスカイヤー＜スピンパワーの順でよくしなっている。
知見②：体感的なロッドの硬さは、
BORONプロスカイヤー＞＞S-DHZプロスカイヤー＞スピンパワーの順となる。
BORONプロスカイヤーは極めて硬い。
一方、スピンパワーはBORONの基準でいうなら35号程度の硬さに感じる。
5. 総合評価
これまでBORONプロスカイヤーでのSC競技参戦にこだわり続け、
スピンパワー勢との争いに勝ったり負けたりしてきましたが、
今回徹底比較を行う中で感じられたのは紛れもなくスピンパワーのポテンシャルの高さでした。
投げる上で非常に扱いやすく、ロッドのしなりが手に取るように感じられ、
反発挙動も極めてマイルドかつ強烈。
ST種目では文句ナシに優れたロッドであると断言できます。
一方でBORONプロスカイヤーは反発こそ強烈ですが、
ロッドを曲げるためのパワーゾーンが非常に狭く、少しでも体調不良だと
全く曲がってくれないため、比較テスト中にも数回プチスランプ状態に陥ってしまいました。
ポテンシャルを引き出すのは至難の業ですが、バッチリタイミングが合ったときには
投げた本人が一番ビックリするような飛距離を生んでくれるロッド。
夢をもち、努力を重ねてようやく使いこなせるロッドはあまり他人にはお薦めできませんが、
このロッドで良い成績が残せたときには感涙と勝利の美酒に酔うことができます。
BORONプロスカイヤーの弟分であるS-DHZプロスカイヤーは
反発挙動にジャジャ馬的な特性を持ちますが、BORONに比べると
若干パワーゾーンが広い（スピンパワーよりはずっと狭いが…）ため、
スピードとタイミングで投げるキャスティングから瞬間的パワー勝負で投げるキャスティング
（いわゆるパワーキャスティング）へステップアップを目指す方にお薦めしたいロッドです。
総括するとどれも良いロッドで、今シーズンどのロッドでSC競技に参戦するか
迷いを感じてしまいます。
向かい風ならBORONプロスカイヤー，
追い風ならスピンパワー，
体が温まり難い春先の大会ではS-DHZと、
それぞれ使い分けると常に良い成績を残せるかも…と欲張った作戦を考えています。
最強のキャスティングロッドとしては、
夢と感動を与え心の底からキャスティングが楽しいと思えるロッドということで
BORONプロスカイヤーと、
扱い易く飛距離もバツグンということでスピンパワーと、
両者引き分けとしてもよろしいでしょうか？