キス釣りから見たスポーツキャスティング競技入門

投げ釣りは魚を釣るだけではないキャスティング（遠投）というスポーツ志向の一面もある。
そんな訳で今回は案外知られていないキャスティング競技を紹介しよう。

まず、以下の表を見てもらいたい。
使用する道糸やオモリの号数などで１種目〜６種目に分類される。
そして全日本サーフキャスティング連盟（ＡＪＳＣＦ）だけで採用されているセーフティー（ＳＴ）種目。
ほかに１００ｍ先にターゲットを設置し、どれだけ精度よく近寄せるかを競うポイント種目。
女性種目などに分類される。
この中でも今回は競技キス釣りなどに応用が利くＳＴ種目と５種目に絞り込み解説してみたい。

なぜ５種目とＳＴ種目かというと、まず１種目２種目だと使用できるリールは自由なのだが
チューニングされた両軸（ベイト）リールが飛距離を稼ぐのに断然有利でスピニングでは勝ち目が無い。
そうなると必然的にキス釣りには使えない。

両軸（ベイト）リール	スピニングリール

次に３種４種６種だがオモリ位置が自由となっているが実際には振り子のように空中でオモリをスイングさせロッドの反発力を最大限発揮する（スイング投法）が飛距離も伸びるので主流。

スイング投法

しかし実釣では３ｍもあるキスの仕掛けをスイングで投げる訳にも行かないので此方も応用が出来ない。
そうなればオモリを地面に着地させ正確な遠投距離を競うＳＴ種目と目一杯遠投する５種目が実釣スタイルにピッタリなのである。

まずタックルだが両競技とも同じ物である。

現在主に使われているのは投げ釣り専用ロッド4.05〜4.25ｍオモリ負荷３５〜４０号、投げ釣り用大型スピニングリール（スプール径の大きな物）に道糸ナイロン２号２００ｍ以上＋力糸（３号〜１６号テーパー）指定品を接続、オモリは写真の（真ん中）２５号にクッション材の黄色ゴムキャップをかぶせた専用のオモリを用いる。

オモリ（シンカー）右から１５号２５号３０号

次にコートの略図を見て欲しい。

賢明な読者貴兄ならすぐに気付かれたと思うが投擲エリアの違いである。

ＳＴコートの投擲幅は１．５ｍ長さ８ｍしかない。

このエリアから足は勿論オモリがラインを割ればファール（失格）なのでスリークオーターやサイドスローでは投げられない、必然的にオーバースローでの投擲である。

そしてオモリ位置だが自分の腕の長さ（振り幅）１ｍ＋ロッド長４．２５ｍ＋垂らし３ｍ＝約８．２５ｍになり直線では８ｍを越えてしまうので逆Ｖ字のオモリ位置なのである。

着地V字投法

実釣でこのＳＴ投法は遠投で狙ったピンポイントを攻めるのにはかなり有効な投法である。

次に一番キス実釣向きの投法である５種目だが投擲エリアが１０ｍ×１０ｍと広いので最大２７０度ロッドを回転させることが出来る。
しかし此方も直線で９ｍ近い振り幅なので余裕はあまり無く油断は禁物である。
コートの幅だがＳＴ種目だと２００ｍ先で４０ｍ幅の中に投擲せねばならないのである。

この幅は競技で投擲エリアに入ると実感できるのだが、かなりの狭さにビックリするはずである。
５種目はＳＴよりも広く幅１００ｍ有るのだが回転投法等でフルキャストしているので中々セーフティーゾーンに投擲するのが難しい。

そして各競技とも５回投げ３投の平均距離で成績が決まるのである。

ちなみに全日本サーフでの日本記録（公認）は
ＳＴ種目で（３投平均）196.68ｍ（最長203.02ｍ）
5種目（同）185.84ｍ（最長190.62ｍ）
これ等の記録は風速などを規定値内に収めた公認記録である。

スポーツキャスティングと言うと種目が沢山あり一見するとややこやしいがキス釣りスタイルから見れば案外理解が出来ると思う。

各地で競技会や練習会などが盛んに開催されているので飛距離でお悩みのキス釣りキャスターは一度見学もしくは、一般参加を受け付けるオープン大会もあるので参加されては如何だろうか。

競技キス釣りトップトーナメンターの多くはスポーツキャスティング大会での記録保持者であるのも事実である、裏を返せば常日頃のキャスティング研究や練習の賜物かも知れない。


参考（キャスティング大会開催団体）
日本スポーツキャスティング連盟（ＮＳＣ）
ジャパンスポーツキャスティング連盟（ＪＳＣＦ）
全日本サーフキャスティング連盟（ＡＪＳＣＦ）等